ところが、何ということでしょう! 
肝心の氷の国の氷河が!

「この氷瞬城に幽霊なんかいるわけがないじゃないか」
だなんて、つまらないことを言い出したのです。

「だって、13号が見たんだって」
「うん、僕、見たよ」

「しかし、この城には、昔の王様が戦争に負けて自害して果てた伝説もなければ、綺麗なお姫様がどこかに閉じ込められていた歴史もない。この城は、俺がとんてんかんとんてんかん、おまえたちのために作った城だからな」
『合体瞬とのスイート・ライフのために』という言葉を無理に飲み込んだ氷の国の氷河の無念を、小人たちは知りようもありません。

「でもでもでも〜!」× 15

「だーめ。そんなこと言って、夜更かしするつもりなんだろう。子供は夜はちゃんと眠るもんだ。この城には、化けて出るほど無念の思いを抱えた人間が住んでいたことはない。だから、幽霊も出ない」

「でも、13号が〜!」× 14
「そーだよ。僕、確かに見たんだから! 氷河がいつも着てるYシャツみたいなのを着た、氷河と同じくらいの大きさの幽霊が、行き倒れ寸前の氷河みたいに、夜中の廊下の隅で不気味に蠢いてるのを!」

「だめだ。幽霊なんかいるわけないのに」
小人たちの必死の訴えにも関わらず、氷の国の氷河はどうしても首を縦に振りません。
他のことなら、小人たちのどんな我儘だって許してしまう氷の国の氷河でしたが、小人たちの健康的な生活を乱すことには、氷の国の氷河はとってもとっても頑固なのです。

「もしかして、氷河、恐いの?」
9号の挑発にも、氷の国の氷河は断固とした態度をとり続けます。
「ばかなこと言うんじゃない。俺は、おまえたちよりずっと大きいんだぞ。恐いはずがないだろう」

「でも、幽霊さんはきっと小人の僕たちには気付かないと思うから、もし幽霊さんに襲われるとしたら、氷河の方だもんね〜」

「恐くなどない!」
それが、氷の国の氷河のファイナルアンサーでした。


「ん〜。意見も出尽くしたようだし、じゃあ、採決をとるよ」

1号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」
2号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」
3号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」
4号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」
5号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」
6号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」
7号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」
8号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」
10号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」
11号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」
12号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」
13号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」
14号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」
15号「氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く」

9号「で、僕ももちろん、氷河は僕たちと一緒に幽霊探検に行く、と。氷の国は民主主義国家だからね。氷河、国会の決定には従ってね。じゃないと逮捕しちゃうぞ〜」


「…………」
氷の国の氷河のファイナルアンサーなど、氷の国ではほとんど無意味でした。

ともかく、国会の決定には逆らえません。
氷の国の氷河は、その夜、小人たちと廊下の隅で幽霊さんを待つことになってしまったのでした。