「見たのに、見たのに、見たのにっ! あれはカレーパンなんかじゃなかったのに……!」

傷心の13号は、その頃、氷瞬城の広間の隅っこで、しくしく泣いていました。


と、突然、何か白く光るものが、13号の目の前に出現したのです。

「君が見たっていうのは、こんな奴かな?」
「うん、そう、こんなの……え? ひ……氷河っっ !? 」

13号の前に現れたのは、氷の国の氷河と同じ顔をして、氷の国の氷河と同じ髪をして、氷の国の氷河と同じ服を着た、氷の国の氷河と同じサイズの――氷の国の氷河でした。
少なくとも、13号にはそう見えました。

「うーん、ちょっと違う」
「違わないよ。氷河だよ。髪も手も肩も鼻の穴の形もおんなじだもん」

13号は、今自分の目の前にいる金髪・普通サイズの人間が氷の国の氷河だということに、幽霊とカレーパンを見間違えたのでない以上の、絶対の自信がありました。
何と言っても、いつも下から見上げているので記憶鮮明な鼻の穴の形が、13号がいつも見ている氷河のものとまるっきり同じだったのです。


小人たちは、いつも、

「これまでたくさんの人たちを見てきたけど、僕たちの氷河ほど、鼻の穴の形が綺麗な人には会ったことがないね」
「うん、僕たちの氷河の鼻の穴の形は最高だね」
「世界一だと断言してもいいよね」
「採決をとるまでもないね」
「素敵……(ぽ〜☆)」× 15

――てな感じで、毎日、氷の国の氷河の鼻の穴の形にうっとりしながら過ごしてきました。
小人たちは、実は、とっても面食い(?)でしたから。


その! その、世界一美しい鼻の穴の形を、13号が見間違えるわけがありません。
どう考えても、それは氷の国の氷河のはずでした。