「ゆ……幽霊だーっっっ !!!! 」× 14

やっと13号を捜し当てた仲間たちの声が、生霊さんと13号のちゅうシーンに乱入してきました。

「13号が幽霊に食べられちゃうーっっ !! 」× 14

「みんなっ、採決をとってる暇はないよっ! 13号を助けるんだっ!」
「おーっっ !! 」× 13

大切な仲間の危機とあっては、相手が幽霊だろうが怪獣だろうが、たじろいでいるわけにはいきません。
小人たちは、小人たちから見たらキングギドラ以上に巨大な敵に向かって、ただの一瞬たりともひるむことなく一直線に突撃していったのです。

けれど。
小人たちの決死の突撃は、ほとんど無意味でした。
小人たちに力がないからではありません。
小人たちが小さいからでもありません。

キングギドラに向かって仕掛けられた小人たちの攻撃は、暖簾に腕押し。
14人一丸・全力疾走の小人たちの身体は、するっと生霊さんの身体をすり抜けてしまったのです。

けれど、でも、小人たちはめげずに、すぐに回れ右して、再び生霊さんに向かって突撃していきました。

再び、すかっ。
再び、回れ右。
再び、突撃。
再び、すかっ。

「あーん、あーん、13号―っっ !! 」× 14

『すかっ』と『回れ右』と『突撃』と『すかっ』と『回れ右』と『突撃』と『すかっ』と『回れ右』と『突撃』を繰り返しながら、小人たちはみんな、泣いていました。
いつも冷静でお利口な9号の顔も、涙でぐちゃぐちゃです。

「13号―っっ !! あーん、あーん、あーん !! 」× 14


そんなふうに、小人たちが、悪夢の無限攻撃を繰り返しているところに、やっと氷の国の氷河の登場です。
「ゆ……幽霊…… !? 」

氷の国の氷河は、本当は幽霊がとっても嫌いでした。
けれど、今はそんなことは言っていられません。

「きっ貴様―っっ、俺の小人たちに何をするー !! 」
氷の国の氷河は、雄叫びをあげて、生霊さんに殴りかかっていきました。
が、氷の国の氷河もまた、すかっと敵の身体をすり抜けて、顔面から床にべちょっ★

生霊さんは、そんな氷の国の氷河の様子を見て、深い深い溜め息をつきました。
「これが、俺の本体だと思うと情けないねぇ」

「み……みんなっ! 氷河―っっ !! 」
氷の国の氷河と仲間たちの捨て身の攻撃を目の当たりにした13号が、超光速どころでないスピードで花瓶の台から飛びおり、倒れ伏している氷の国の氷河の許に駆けていきます。

「じゅ…13号、無事か……」
たった一度の攻撃失敗で、氷の国の氷河はほとんど虫の息でした。

「うん、氷河、僕、大丈夫だよっ」

「13号〜っっっ !! 」× 14
仲間たちが、泣きながら、13号の側に駆け寄ってきます。

「みんな……心配かけて、ごめんね……」
「僕たちこそ、13号のこと信じてあげられなくてごめんね〜っっ !! 」

小人たちの心は、やっぱり、いつだってひとつです。
13号は、自分のために巨大な敵に立ち向かってくれた仲間たちに感謝して、他の14人は13号が無事なことに感謝して、お互いに肩を抱き合って、おいおい泣き出してしまいました。

それは、15人の心が再びひとつになった、美しくも感動的で、心洗われるような光景でした。



それに比べて――。

床にべちょっ★ と倒れ伏したままの氷の国の氷河を、最初は苦虫を噛み潰したような顔で見おろしていた生霊さんは、やがて、真顔になって低く呟きました。
「そのうち、俺の方を好きにならせてみせる」

「い…生霊さん……?」
ちょっと怖い顔になっている生霊さんを、13号が恐る恐る見上げると、生霊さんはすぐに、優しくてセクシーな微笑を13号とその仲間たちに見せてくれました。

「可愛子ちゃんたち、また会おうね」

小人たちは、生霊さんのセクシーなウインクに、思わず、
『ぽ〜っ☆』× 15
――です。


そうして、生霊さんは、小人たちと氷の国の氷河の前から、幽霊のように消えてしまったのでした。