みんながわんわん泣いて始まった西暦2004年。

突然、
「じゃあ、こうしましょう!」
と提案してきたのは、もちろん甲斐性なしの氷の国の氷河なんかではありません。
その場でただひとり泣いていなかった、アテナ沙織お嬢、その人でした。

「あれ、この人……」
「どっかで見たことが……?」
てっきり派手な門松か何かだと思っていたお飾りが喋りだしたのに、小人たちはびっくり。
しかも、その派手な門松もどきに、小人たちは見覚えがありました。

「あーっっ! おととしの夏に、僕たちを氷河から引き離そうとした、派手で悪いおねーさんだ!」
「そ……そんな昔の話は忘れてちょうだい」

愛しの小人たちに、そんな覚え方をされていたことにショックを受けつつも、アテナ沙織お嬢は、決然として言い放ちました。
「おせち料理は、小人さんたちへの私からのプレゼントということにしましょう。お礼の食器は当然、私のものってことでどうかしら? 配達してくれた手間賃として、そちらのおにーさんには、私から100万円を支払って、おせちの件はそれで不問。私は、これからもこちらのお店を贔屓にするわ。それでどう?」

「私としては、お客様さえよろしければ、それで……」
「俺は、クビさえ取り消しになるのなら……」
「僕たちは、氷河さえ幸せなら……」
「俺は、俺の小人たちさえよければそれで……」
「そして、私は、小人さんたちのレアアイテムをゲットできれば、万々歳よ!」

アテナ沙織お嬢の提案は、その場にいた全員を満足させるものでした。
みんなが頷くのを確認したアテナ沙織お嬢は、頭の羽飾りをわさわさ揺らして、高笑いです。
「じゃあ、それでいいわね。三方一両損じゃなくて、五方一両得。私は大岡越前以上の名奉行だわ! おーっほっほっほっほ!」

「ふぇ〜。相変わらず、元気で派手だね〜」
「派手でも宇宙人でもいいよ。僕たちと氷河を引き離そうとさえしないのなら」
「うんうん、そうだね」
「アテナ沙織お嬢おねーさん、ありがとー !! 」× 15

アテナ沙織お嬢の名裁きに、小人たちが揃ってお礼を言います。

「こ……小人さんたち……」
途端に、それまで、その場でただひとり泣いていなかったアテナ沙織お嬢が、
「あーん、あーん、あーん !! 」
と、大泣きモードに突入してしまいました。

「お……おねーさん、どうしたのー?」
「どーして泣いてるのー?」

驚いた小人たちが、アテナ沙織お嬢に尋ねると、アテナ沙織お嬢は、鼻の頭を派手に赤くして、ちょっとくぐもった声で言いました。
「小人さんたちにお礼を言ってもらえるなんて、うっ……嬉しくて……。あんなことがあったし、私、小人さんたちに嫌われてるんじゃないかと……」

「そんなことないよ〜」
「氷河と僕たちを引き離そうとさえしなかったら、僕たち、面白いおねーさんは好きだよー」
「うんうん。おねーさん、頭もいいみたいだし、キップもよくて、僕たち、おねーさんのこと大好き〜」

「こっ……小人さんたち……。あーん、あーん、あーん、嬉しいいぃぃぃ〜っっ !! 」
小人たちに『大好き』と言ってもらえたアテナ沙織お嬢の泣き声は、ますます大きく騒がしくなっていきましたが、これは嬉し泣きですから、ちょっとくらいうるさくたっていいですよね。