無事に商談成立した、その夜の氷瞬城。


5号が、心配そうに9号に尋ねました。
「ねえ、9号。あれって嘘ついたことにならないの?」

「嘘なんてついてないじゃない。僕が商談の練習したのはほんとでしょ?」
不安そうな5号たちとは裏腹に、9号はさっぱりしたお顔です。

「そりゃ、みんなで嘘泣きの練習はしたけど……」
「だって、僕たちの氷河のぱんつ企画を安売りなんかできないもん」
「うん、そうだけど……」
「氷河を幸せにするために、僕たちは生きてるんだよ」
「そうなんだけど……」

それは、小人たち全員の偽りない気持ちでした。
でも、やっぱり、9号以外の小人たちには、どこか割り切れないものがあったのです。

「3億円もらったら、いつものぱんつのお礼に、氷河にかっこいいお洋服買ってあげるんだ!」

「う…うん、買ってあげたいね〜」

9号の言葉に、小人たちはぽわ〜んと夢見る瞳。

「僕たちの氷河はかっこいいから何でも似合うよね〜」
「うんうん。きっと喜んでくれるよね〜」

そうなのです。
小人たちは、小人たちの愛する氷河のために、頑張っ(て嘘泣きし)たのです。

その目的は、小人たちにとっては、どんな手段も正当化されてしまうほど意義のある、大事な大事な目的でした。

「だから、あれは正しいことなんだ!」
「そーだ、正しいことなんだ!」
「氷河のためなんだもの!」
「そーだ、僕たちの氷河のためなんだ!」
「僕たちは氷河を愛してるんだ!」
「うんうん、誰よりも愛してるんだ!」
「だから、これからも、氷河の幸せのために頑張るんだ!」
「もちろんさ!」


「えいえいおー !!!! 」 × 15


小人たちの心はいつも一つ。
『氷河の幸せ』という目的の前に、小人たちの心の中にあった不安や罪悪感はすっかり消し飛んでしまったのでした。






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