それは、まだ世界のどこにもぴーまんがなかった去年の夏のことです。

氷の国の小人たちは、氷の国の氷の森で、1本の不思議な植物を見つけました。
それは、小人たちが初めて見る植物でした。
大きさは氷の国の氷河の膝のあたりくらいまであるでしょうか。
白くて可愛い花が咲いていて、パラソルチョコみたいな形をした緑色の実がなっていました。

夏のお陽様の光を受けて、つやつや光っている緑色の実は、まるで宝石のよう。
小人たちは、自分たちの頭のずっと上の方にある緑色の実を振り仰いで、首をかしげながら言いました。

「これは何の実かなあ?」
「キュウリよりは小さいけど、キュウリよりつるつるしてる」
「インゲン豆にも似てるけど、インゲン豆よりてかてかしてる」
「スイカにしては縞模様がないけど、スイカよりもぴかぴかしてる」
「初めて見る実だね」
「うん、初めて見たね」
「おいしいのかな」
「あんなにつやつやしてるんだから、きっとおいしいに決まってるよ」
「うんうん。おいしいに決まってるよ」

そうと決まったら、善は急げ。
つるつるでてかてかでぴかぴかの未知の実の素敵なお味を、すぐに確かめてみなければなりません。

「じゃあ、そういうことで」
「うん、そういうことで」
「突撃だ!」
「わーい !! 」× 15

氷の国の氷の森に大きな歓声を響かせて、小人たちはその木によじ登り、綺麗な緑色の実にかぷっ☆ とかじりつきました。


──それからどういうことが起きたのかは、賢明な皆さんにはもうおわかりでしょう。
一口その実にかじりついた途端、あまりの辛さに白目を剥いて、小人たちはぼとぼとと、熟しすぎたトマトみたいに地面に落下することになったのです。

小人たちがかじりついた、つやつやでてかてかでぴかぴかの緑色の実はトウガラシの実でしたから、それも当然のことでした。