「おまえたち……」

小人たちの涙ながらの切ない訴えで事情を察した氷の国の氷河は、強く、深く、胸を打たれました。

氷の国の氷河は、何よりも誰よりも小人たちを愛していました。
小人たちを泣かせるものは、神様だって、氷河の敵でした。

「おまえたち、泣かないでくれ」
「だって、氷河がーっっ!」
「氷河が地獄に落とされちゃうー!」

氷の国の氷河が地獄に堕ちると決めつけている小人たちにも、ちょっと問題ありでしたが、小人たちは、神様を信じていないというより、氷の国の氷河の不運を堅く信じていたのです。

氷の国の氷河は、小人たちを潰してしまわないように、そっと抱きあげました。
そして、いつまでも泣きやまない小人たちに優しく言いました。
「たとえ、何があったって、どんなことになったって、俺はおまえたちと一緒だ」

「でも、神様が……!」
「神様が何だ! おまえたちを泣かせる奴なんか、俺が退治してやる」

できもしないくせに、大口を叩いているなんて思ってはいけませんよ。
『氷の国の氷河のくせに、生意気だぞ』なんて、ジャイアンみたいなことを言うのもいけません。
氷の国の氷河は本気でした。

「神様を退治しちゃうの?」
「神様って、恐いんだよ」
「神様って、偉いんでしょ」
「神様ってせくしーかしら」

「おまえたちを泣かせる神様のどこが偉いもんか!」
「氷河……」

いつになくきっぱりとそう言い切る氷の国の氷河を、小人たちは、涙に濡れたつぶらな瞳で見あげました。
氷の国の氷河はとても優しい目をしていました。
そして、とてもとても凛々しい面差しをしていました。

「氷河……」

「いつまでも一緒にいような」

「うん……」
「そうだよね」
「うん、僕たち、いつまでも一緒だよね」

「もちろんだ」

頼もしくて頼り甲斐のある氷の国の氷河なんて、滅多にお目にかかれるものではありません。

「氷河―っっ !! 」× 15
小人たちは、感動のあまり、氷の国の氷河にしがみつくと、またまた、あんあん泣きだしてしまったのです。

でもね。
小人たちの瞳を濡らしている涙は、今度はもちろん、嬉し涙だったんです。