「なんてこった……。あさっての夜までかけても売り切れないだろうと思ってたのが、小半時で全部売り切れちまった……」


奇跡の場面に立ち会って、ひたすら呆然としている団子屋のおじさんの前で、小人たちはぬかりなく明日への布石打ちに努めていました。



「なんでぇ、もう売り切れなのかい? ウチの坊主にも買ってってやろうと思ってたのによぉ」
「ごめんね、おじちゃん。ウチのお団子、おいしいから、すぐなくなっちゃうの」
「まあ、明日の日もあるしなぁ。今日のところは、涙を飲んで諦めるか」


「明日は早く来てね。朝から綺麗なおねえさんの顔が見れたら、僕たち嬉しいな」
「あら〜、小人さんたちったらぁ」


「おねえちゃん、それじゃあ、明日はお孫さんも連れてきてね。おねえちゃんのお孫さんなら、きっと、うんと可愛いんでしょう?」
「そうさねぇ。どっかのお城のお姫様みたいに可愛いよ。小人さんたちに会わせてあげたいねぇ」


「おい、出し惜しみすんなよ。厨房の隅にまだあるじゃねーか」
「あれは、昨日、うっかりして売り忘れた分なの。まだまだおいしく食べれるんだけど、残りものをお客さんに出したら、団子屋の恥でしょう? 僕たち、お客さんには、いちばんおいしいお団子だけを食べてもらいたいんだ」
「おっ、江戸っ子だねぇ! 気に入った! これから俺ぁ、この店を贔屓にするぜ」
「ありがとう、おじちゃん!」



それは、まさに完璧なクロージング作業でした。

――小人たちは、どちらかと言えば裏方専門&引きこもりタイプの岡っ引き氷河と違って、接客業の天才だったのです。







[次頁]