「ありがてぇ、ありがてぇ。ありがとうよ、小人さんたち。この店がこんなに活気に満ちたのは、15年の団子屋稼業で初めてのことだよ。ありがてぇ、小人さんたち、ほんとにありがとうよ」

生まれて初めて、お団子完売という偉業を達成できた団子屋のおじさんは、何度も何度も小人たちに『ありがてぇ』を繰り返しました。
その瞳には嬉し涙がにじんでいました。


団子屋に生まれたからには(?)、お客さんの『うまかったぜ、また来らぁ』が何よりの励ましです。
その言葉を、団子屋のおじさんは、団子屋生活15年目にして、今日初めて聞いたのです。
こんな嬉しいことがあるでしょうか。


「おじさんの作るお団子がおいしいからだよ。まずかったら、いくら僕たちが頑張ったって売れっこないし、お客さんも二度と来ないよ」
「うんうん、そうだよね〜」

「もっともっとおいしいお団子を作るんだ。たくさん売れるようになっても、慢心せず、手を抜かず、一つ一つ心をこめて、お団子を作り続けるんだ。でないと、僕たちだって働く気にならないからね」

「おいしいから、自信を持って売れるんだよね」
「おいしいお団子を作れるおじさんが、いちばん偉いんだよね」
「尊敬しちゃうよね!」


「小人さんたち……」

小人たちの言葉を聞いて、団子屋のおじさんは、ついに、子供のようにわんわんと声をあげて泣き出してしまったのです。

これまで、お客さんに『おいしい』と言ってもらう以前に売れなくて、仕方がないので、数日前の売れ残りを売りに出し、もちろんそんな団子がおいしいはずもなく、リピーターはつかない、団子は売れ残る――という悪循環を繰り返してきたおじさんでした。

苦労ばかりかけたおかみさんを病で亡くし、それでも、おかみさんと守ってきた団子屋を潰したくない、いつかきっと誰かが『うまい団子だねぇ』の一言を言ってくれる日が来る――そんなささやかな希望だけを支えに、これまで頑張ってきたおじさんだったのです。


「おじさん、泣いてる暇はないよ。明日が勝負だよ! ほんとの勝負だ!」

やる気満々の9号の瞳は、爛々と輝いています。
いいえ、やり甲斐のある仕事に巡り合えた小人たちは、全員の瞳が勤労意欲と生気に満ちていました。



「よーし、明日も頑張るぞー!」

「おーっっ !!!! 」× 16

小人たちの『えいえいおー』に、今日は団子屋のおじさんも仲間入り。

岡っ引き氷河も、小人たちが安全健全なお店に就職が決まったのに一安心したのでした。







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