はじまりは、なぜか飴




それは、一時ほど前の出来事でした。

「ああっ、待って待って〜!」

ひとりの小人さんが、ころころ転がるどんぐり飴を一生懸命追いかけていました。
それは、さっきお店のお使いでお客さんのところへ行った時にもらった大事な大事なお駄賃。
小人さんはその飴を、今日のお仕事が終わるまで、お店の納戸にしまっておこうと思ったのですが、薄暗い納戸に足を踏み入れた途端に何かにつまずいて、大事な飴を落としてしまったのです。

「どんぐり飴、待て待て〜」
と声をあげながら、転がってゆく飴と追いかけっこをしているうちに、小人さんは段々楽しくなってきました。

ちょっとぼこぼこしたその飴は、あっちへ飛んだり、こっちに跳ねたり、予測できない動きで予測できない方向に逃げていきます。
そんなふうに微妙な動きを見せるどんぐり飴との追いかけっこは、なんだかとっても楽しくて、いつしか小人さんはどんぐり飴との追いかけっこに夢中。
周りのことはすっかり目に入らなくなっていました。

そうしているうちに。

「あっ!」
小さな叫び声が聞こえたかと思うと、小人さんの姿は、色んな入れ物や荷物の積み重なっている広い納戸のどこにも見えなくなってしまったのです。

いったい、小人さんはどこへ消えてしまったのでしょうか……。







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