そこで、なんとあの銭形氷河が一念発起。
昼間の岡っ引きの仕事、お団子屋さんのお手伝い、着物の仕立て仕事だけでは、暮らしは良くならないと悟った銭形氷河は、バイトをもう一つ増やすことにしたのです。

もちろん、銭形氷河の姿のあるところ、花のお江戸の小人たちの姿あり。
なにしろ、銭形氷河だけにお仕事をさせておくと、どんなヘマをすることになるかわかりませんからね。
ですから、銭形氷河が新しいバイトを始めると言い出した時、小人たちは即座に、自分たちも一緒にバイトに出ることを決めたのでした。

それが、今、小人たちが働いている花のお江戸の湯屋なのです。
湯屋というのは、江戸時代の公衆浴場、銭湯や温泉みたいなもの。
要するに、お風呂屋さんですね。

当時のお風呂屋さんの2階は休憩室みたいになっていて、おやつや遊び道具なんかもいっぱいあるのです。
小人たちは、湯屋の2階のスペシャルコンパニオン、銭形氷河は湯屋の三助として、花のお江戸の湯屋に雇われることになったのでした。
ちなみに、三助というのは、お風呂のお湯を沸かす燃料の木屑拾いをしたり、お客さんの下足番や釜焚き番をしたり、お風呂場のお掃除をしたり、時には、お客さんの背中を流してあげたりもするお仕事をする人のこと。
不器用で人あしらいはへたっぴでも、腰が低くて真面目な銭形氷河には、なかなか向いたお仕事でした。

もちろん、踊りが上手で、お喋りも巧みで、お客さんの将棋や碁や双六の相手もできて、おやつを食べる姿も可愛らしい花のお江戸の小人たちが、湯屋の人気者になったことは言うまでもありません。

抜け目のない9号は、湯屋の2階の休憩室に出すおやつとして、お団子屋さんのお団子を仕入れる契約を湯屋のご主人と結び、お団子屋さんの宣伝を兼ねて、銭形氷河お手製のお団子マーク前掛けの着用の許可ももらいました。

これがいわゆる、歴史的にも有名な、花のお江戸の小人たちのタイアップ商法。
9号考案のこの共存共栄商法は、やがて花のお江戸中に広まることになるのです。


それはともあれ。
混浴禁止令が出たばかりのこの時代、たまに現れる覗きや痴漢を、
「なんてみっともないことするのっ、びしっ★」
と取り締まる9号の姿が凛々しいと、花のお江戸の娘さんたちにも大評判で、花のお江戸の湯屋は大繁盛していたのです。







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