そして、誰もいなくなった




「みんな、自分の持ち場は確認したね? 申の刻になったら、報告と状況確認のため、全員番台前に集合のこと。では捜索始め!」
「おおーっ!」× 15

そうして、1号捜索大作戦は開始されました。
9号の指揮のもと、小人たちは、ちょっぴりの心配と大きな期待を胸に秘め、湯屋の店内の各自担当ブロックに向かって駆け出していったのです。

ところが。
元気よく駆け出していった小人たちとは対照的に、銭形氷河は、相変わらず、落ち着きのないオランウータンごっこを続行中。
ほとんど錯乱状態で、全く有益なこともできないまま、ひたすらおろおろしているばかりです。

「ああああ〜俺のかわいい小人たちがかどわかされて、あああああああんなことや、そそそそそそそんなことをされたりしていたらあぁあぁぁぁ〜 !!!! 」

「氷河ったら、そんなとこで油売ってる時間はないでしょ、びしっ★ 氷河は、お店の外まわりを捜してきて!」
「おおおおお店の外まわりな、外まわり……よよよよよし、わわわわわかった〜」
9号の指示を受けて、それでも何とか銭形氷河は行動を開始しました。

銭形氷河には、いついかなる時でも小人たちの命令には絶対服従の癖がついているのです。
主体性や能動性に欠けると言えばそうなのですが、それは、小人たちの命令ならどんなことでも遂行できるということでもあります。

そう、彼は、愛する小人たちのためだったら、どんな(馬鹿な)ことでもできる男なのでした。







[次頁]