「ど……どうも、お待たせいたしました〜……(おおおおおまえたち、どこに行ってしまったんだ〜 !? )」
泣きそうな顔をして、小人たちの詰まった砂糖壺を載せた荷車を運んできたのは、もちろん銭形氷河です。

「ああ、ご苦労だったな。これを受け取りたまえ。少しだが私の感謝の気持ちも入っている」
約束していた手間賃と上乗せ分チップと引き換えに、小人たちの詰まった砂糖壺をミロ医学者に引き渡してしまったのも、もちろん銭形氷河です。

「こ、これはご丁寧にどうもありがとうございます〜……(おおおおおまえたちがいないと、俺は……俺は〜っっ !! )」
海に向かって号泣したい気持ちを必死に抑え、小人たちの詰まった砂糖壺が載っていない空の荷車を引いて、ミロ医学者に背中を向けたのも、やっぱり銭形氷河でした。


自分の命よりも大切なものを、そうとは知らずに、自分の手で、見ず知らずの異人さんに渡してしまった銭形氷河。
へこへこと腰の引けた様子で空の荷車を引いていく銭形氷河の後ろ姿には、いつもの百万倍増しの“哀れ”と“不幸”と“不運”がへばりついています。

銭形氷河の“哀れ”と“不幸”と“不運”が、いつもの百万倍になっているのは、今、彼が孤独だったからでした。
孤独でさえなかったら、実は銭形氷河は“哀れ”も“不幸”も“不運”も、結構平気でした。
仲のいいお友だちみたいに、“哀れ”や“不幸”や“不運”と一緒に楽しく暮らすこともできました。

孤独でなかったなら。
孤独でさえなかったなら、です。

愛する小人たちを失ってしまった今の銭形氷河には、“哀れ”や“不幸”や“不運”に立ち向かう力はもちろん、耐える力すらも残っていませんでした。







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