銭形氷河の“哀れ”も“不幸”も“不運”も知らないミロ医学者は、ついに我が物となった花のお江戸の小人入り砂糖壺を見て、至極ご満悦。

「やっと、私の元にきたね」
ミロ医学者は、それはそれは愛しそうに花のお江戸の小人入り砂糖壺を撫で撫ですると、大切な宝物を扱うように細心の注意を払って、その壺を抱えあげました。


ミロ医学者のそんな姿を、茶屋の窓から呆れたように眺めているのは、言わずと知れたカミュ物理学者です。
(人物としては悪くない奴なのだが、大腸菌やクラミジア菌なんかと仲良くしすぎたせいで、芸術に対する目が少々おかしくなっているようだな。まぁいい、船の旅は長い。この私が、船の中でじっくりと、彼の審美眼の軌道修正をしてやろう)

どうやら、カミュ物理学者も、船旅のプランができたようですね。



そんなこんなで、カミュ物理学者とミロ医学者と花のお江戸の小人入り砂糖壺を乗せた船は、わりとあっさり長崎に向かって出航しました。

花のお江戸の小人たちは、
「……ふみゃ〜ん……綿菓子の雲、ふわふわ〜」
「むにゃあ……海のお水って甘かったんだぁ〜」
と、相変わらず、甘い甘い夢の中です。







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