「ぺろり♪」

合体瞬は、長崎かすていらパーラーの壱番から弐拾番までのメニューを、一瞬で平らげました。

「おわわわわわわ〜っっ !!?? 」
「なんと、これはっ!」

合体瞬のすさまじいまでの食べっぷりに目を白黒させているカミュ物理学者とミロ医学者の前で、合体瞬は、可憐な笑顔で言いました。

「おねーさーん! 追加注文お願いしまーす。
 弐拾壱番 練乳かすていら
 弐拾弐番 チョコチップかすていら
 弐拾参番 カプチーノかすていら
 弐拾四番 キャラメルかすていら
 弐拾五番 ベリーベリーかすていら
 弐拾六番 メロンかすていら
 弐拾七番 オレンジクリームかすていら
 弐拾八番 レモンクリームかすていら
 弐拾九番 アプリコットジャムかすていら
 参拾番  キウイかすていら
 参拾壱番 マンゴーかすていら
 参拾弐番 イチヂクかすていら
 参拾参番 巨峰ジャムかすていら
 参拾四番 杏ジャムかすていら
 参拾五番 バタークリームかすていら
 参拾六番 チーズかすていら
 参拾七番 さつまいもかすていら
 参拾八番 かすていらプリン
 参拾九番 かすていらパフェ
 四拾番  かすていら茶碗蒸し
 あと、生クリーム入りココアをお願いしま〜す」

合体瞬の追加注文に、長崎かすていらパーラーの女給さんは動じませんが、カミュ物理学者とミロ医学者は動揺しまくりです。
「し……信じられん……」
「まったくだ。かすていら茶碗蒸しとは何だ。答えろ、ミロ」
「おまえ、何を言ってるんだ? 俺が驚いているのは、そんなことじゃなくて、この可憐で細い身体のどこに、あれだけのかすていらが収まってしまったのかということだぞ!」
「……多分、それこそが東洋の神秘……おわわわわわわわっ !? 」

カミュ物理学者とミロ医学者がセリフを4つ言い終わる間に、花のお江戸の合体瞬は、再び、
「ぺろり♪」× 1
です。
カミュ物理学者とミロ医学者は、もはや絶句するしかありませんでした。

「あー、おいしかった。これで、全メニュー制覇かな」
「そ……そのようだな」
「じゃ、次は3時のおやつの皿うどんと、お夜食にちゃんぽんとカラスミだねっ!」
「まだ、食うのかーっっ !? 」

ミロ医学者の悲鳴を聞いても、花のお江戸の合体瞬は、相変わらず花のように可憐な笑顔です。

「え? だって、お金出すのは氷河じゃないもの。僕、何の遠慮もいらないもの」
「氷河……? それは何だ?」
「何だだなんて失礼な言い方しないでください! 氷河は僕の大事な……」

合体瞬が、可憐に細い眉を可憐に吊りあげかけた時、3人の間に割って入ってきたのは、もちろん、長崎かすていらパーラーの女給さんです。
「はーい、お取り込み中のところ、申し訳ございません。制限時間いっぱいです。500文を3人分で1500文になります〜」

3人でこの量であれば、お店の勝ちなので、女給さんは、合体瞬の食欲を全く気にしていないようでした。
長崎の女給さんは、なかなかどうして、かなりの大物のようですね。







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