「むにゃ〜。僕、もう食べれない〜」 「すーかすーか、僕も、おなかいっぱい〜」 「ふみゃふみゃ、カラスミは無理だけど〜」 「ん〜、かすていらなら、もうちょっと入るかも〜」 よおろっぱ随一の繁栄を誇る阿蘭陀国の王宮で、ヒルダ女王とジークフリート王子の丁々発止のやりとりが交わされていた頃、阿蘭陀行き六掛け客船スイート船室では、花のお江戸の小人たちが、超スイートな夢に浸っていました。 阿蘭陀行き六掛け客船スイート船室の巨大ダブルベッドの枕の上に、から〜☆ と並んで眠っている小人たちの姿を眺めていたミロ医学者が、ふいにぽつりと呟きます。 「……合体……してくれないかな……」 ミロ医学者の身の程知らずな呟きを、カミュ物理学者はしっかりと聞き咎めました。 「おまえ、未来の主君になるかもしれない小人姫に無礼を働く気か!」 「何を言う! 未来の主君になるかもしれないからこそ、健康診断が大切なんじゃないか! あー、医学者になっといてよかった〜」 「貴様は危険だ。床で寝ろ!」 「せっかく、こんな大きなサイズのベッドがあるのに、どーして、私が床なんぞで寝なければならんのだっ!」 「問答無用! 小人姫の貞操は私が守る! 貴様は床!」 「そんなことを言って、貴様こそ、可愛子ちゃんにいたずらするつもりなんだろう! クールクールと言っている奴に限って、ぷっつんした時が危険なんだ!」 「私はおまえなんかとは違う! 一緒にするな!」 「なにぃ !? 」 「おっ、やる気か?」 「やってやるぜ!」 「いい度胸だ。返り討ちにしてくれる!」 財布の中身も尽きかけてイライラしていたミロ医学者と、ぷっつんして熱くなっていたカミュ物理学者は、そういうわけで、船の甲板で、激しい光速拳バトルを繰り広げることになったのです。 彼等がスイート船室でバトルを始めなかったのは、小人たちのおねむの邪魔をしないようにと気を遣ったからです。 ほとんど正気を失いかけているカミュ物理学者とミロ医学者が、それでも小人たちへの気遣いを忘れなかったのは、それくらい小人たちの寝顔が安らかで可愛らしかったからでした。 |