小人たちを乗せた船は、ジークフリート王子の待つ阿蘭陀国に向かって、順調な航海を続けています。

船の右も左も前も後ろも大海原で、日本列島が遥か彼方に消えてしまった頃、六掛け客船スイート船室の小人たちは、長い午睡から覚めようとしていました。

「くうくう……おかわり……」
「くうくう……かすていら、おいしかった……」
「くうくう……皿うどんも、おいしかった……」
「くうくう……あとはお約束のお夜食……」
「くうくう……それってしゃれなの……?」
「くうくう…………くう……」
「くうくう……それはともかく、お夜食はちゃんぽん……」
「くうくう……それと、カラスミ……」
「くうくう……カラスミって鳥魚子っていう字なの、知ってる?」
「くうくう……さすが9号だね……」
「くうくう……く〜……」
「くうくう……今の、おなかの音?」
「くうくう……く〜く〜……僕のおなかも鳴ってる」
「く〜く〜……おなかすいてきた」
「く〜く〜……僕も〜……」

「ぱちっ」× 15

空腹は、なによりの目覚まし時計です。
おなかの虫の鳴く音に誘われて、小人たちは全員同タイミングで目を覚ましました。

もちろん、小人たちは時間を無駄に使いません。
起きたらすぐに行動開始です。

「おなかのすいた時が食べ時だよね!」
「わ〜い、カラスミとちゃんぽんだー」

小人たちは張り切って次の行動(=お食事)にとりかかろうとしたのですが、これはいったいどうしたことでしょう。
肝心のスポンサーの姿が見えないのです。

「あれ? あのおじさんたちは?」
「ここ、どこかな?」
「なんだか揺れてるね」

「よし! 探検に行こう!」
元気よく右手を宙に突き上げたのは、冒険好きの13号です。

「13号って冒険好きだよね」
「でも、自分たちの置かれている状況を確認しておくのは大事なことだよ」
「そうと決まったら!」
「いざ探検へ」

「しゅっぱぁーつ !! 」× 15

目覚めている間はじっとしていることのできない小人たちは、早速、この見知らぬ場所の探検に出掛けることにしました。
小人たちが円陣を解いて船室のドアの前まで来た時、タイミング良く客室係が来て、部屋のドアが開きます。

「みんな、走るよ!」
「おーっ!」× 14

(……ん? 今、足元を何か駆けていったような……?)
客室係が不思議な気配を感じて、自分の足許を見おろした時には既に、小人たちは彼の足許を擦り抜けて、ててててて〜っ☆ と、一気に通路まで走り出ていました。

このタイミングの良さ!
相変わらず運命の神様に愛されまくっている小人たちは、そのまま誰にも邪魔されることなく、船の甲板まで辿り着くことができたのでした。







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