小人たち一行が案内された海底神殿の大広間には、巨大テーブルが用意され、そこにはご馳走の山ができていました。
お刺身、お寿司、シーフードサラダに、シーフードオムレツ、そして、ゲソ丼!
それはものすごいご馳走だったのですが、小人たちは不満顔です。

「カラスミー」
「ちゃんぽんー」
「かすていらは別腹〜」
小人たちが食べたいものは、ゲソ丼ではなくカラスミだったのです。 

小人たちのそんな様子を見て、銭形氷河はちょっと結構大ショックです。
「おまえたちは、いつから、そんな贅沢なことを言う子になったんだ……。節約家の9号まで……。こうやって、タダでご馳走が食べれるってだけでも、ありがたいことじゃないか……」

「はっ☆」
銭形氷河のその言葉で、最初に我に返ったのは、もちろん、“贅沢は敵”9号でした。

「そうだよ、僕たち、ちょっと前までは……」
「毎日10粒だけのご飯粒だって」
「4文のお団子1串だって」
「あんなに喜べていたのに……」

人間というものは、贅沢に慣れると、かえって貪欲になっていくものです。
それは小人たちも例外ではありません。
けれど、小人たちが、自分の欲にかられて堕落していかないのは、彼等の側にいつも、“清貧”を絵に描いたような銭形氷河がついているから。
そして、素直に反省できる心をちゃんと持っているからでした。

「ご……ごめんなさい、氷河! 僕たち、とっても我儘でした! あーん、あーん、あーん!」× 15

“清貧”を絵に描いたような銭形氷河は、寛容を極めた男でもありました。
深く反省している様子の小人たちに、彼は優しい目をして言ったのです。
「わかればいいんだ。怒ってるわけじゃないからな。おなかがすいているなら、何だってご馳走のはずだ。さあ、食べなさい」

「わーい !! 」× 15
贅沢な気持ちを投げ捨てた小人たちは、そうして早速、テーブルのご馳走のお皿の周りを駆け回り、シーフードのご馳走を平らげ始めたのです。


「あの男、あんな化け物のくせに、なかなかやるな。もぐもぐ」
ミロ医学者は、タコの酢の物を食べながら、銭形氷河の小人あしらいのうまさに、すっかり感心していました。

「小人姫の下僕として、阿蘭陀に連れ帰るのもいいかもしれないぞ。ぱくぱく」
クラゲの酢の物を食べているカミュ物理学者も、ミロ医学者の意見に同上です。

「しかし、私たちが阿蘭陀に帰れる日は来るのか? むぎゅむぎゅ」
「……そこが問題だな」
とかなんとか、カミュ物理学者とミロ医学者の不毛な会話が弾む(?)中、やがて、海底神殿の踊り子さんたちのダンスが始まりました。

「では、海底神殿が誇る七将軍たちのダンスをご覧ください」
ジュリーがそう言うと、カノン、アイザック、ソレント、イオ、カーサ、バイアン、クリシュナの7人の踊り子さんが登場し、海の底への来客たちに、それは見事な東京音頭を披露してくれました。

『ゼータクは敵』の精神に戻った小人たちも、これには不満を隠せません。
「僕たちの方が上手だもーん」
「だよねだよね」
と、さっそく華麗なる小人さんダンスを開始。

「おお、これは可愛らしい!」
見物人たちは、やんややんやの大喝采です。

「ななななんのっ!」
対抗意識を持った七将軍が、今度は阿波踊り開始。

「へたっぴー! 僕たちの方が上手だもんー」× 15
小人たち、更に可愛らしさを増したダンス。

「それなら、これはどうだっ!」
七将軍、どじょうすくい。

「僕たち、負けないもんっ!」
小人たち、更に更に可愛らしさを増したダンス。

――とまあ、そんなふうに、ダンスとご馳走とダンスとご馳走とダンスとご馳走(以下略)で、海底神殿での日々は過ぎていったのでした。







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