冒険の終わり




「これが……氷河の幸せ?」

そこは花のお江戸の街でした。

飴玉ころころすっとんとん事件から始まって、舞台は長崎、大海原、海底神殿と、目まぐるしく移り変わりましたが、小人たち、銭形氷河、クラゲに好かれたミロ医学者、タコに好かれたカミュ物理学者、ぴちぴちマーメイドのテティス、方向音痴のカメさん、成り行きで事件に巻き込まれてしまった阿蘭陀行きの乗員乗客一同は今、賑やかなお江戸の通りのど真ん中にいました。

そこには、『銭形氷河』という表札のかかった立派なお屋敷も、上等の着物も、食べきれないほどのご馳走もありません。
元のまんまのお江戸の町でした。


そんな懐かしい風景の中で、9号は銭形氷河に尋ねたのです。
「氷河の幸せって、なあに?」

銭形氷河は、小人たち全員をぐるりと見回してから、ほんの少しはにかんだような笑顔で答えました。
「そうだな……。お前たちが元気に駆け回って、楽しそうに遊んだり、一生懸命仕事をしたり、好きなお菓子を食べて喜んでいたり、みんなに可愛がられて幸せそうに笑っている姿を側で見ているのが俺の幸せかな。そんな毎日がずっと続けばいいと思ってるよ」

「氷河……」
銭形氷河の言葉に、小人たちはモーレツに感動していました。
これが感動せずにいられるでしょうか!

とどのつまり、銭形氷河の幸せは、雨漏りのしない立派なお屋敷に住むことではなく、上等の着物を着ることでもなく、ご馳走をおなかいっぱい食べることでもなく――今まで過ごしてきた日常を、今まで通りに続けていくことだったのです。

――彼の小人たちと一緒に。


「わ〜ん、氷河だいすきー !! 」× 15
「俺もお前たちが大好きだよ」

モーレツに感動してしまった小人たちと銭形氷河は、花のお江戸のど真ん中で、固くしっかりと抱き合い(?)ました。

得体の知れない一団の周りに野次馬根性で集まってきていた大勢の江戸っ子たちも、幸せそうな16人の姿を眺めて、ふんわりほのぼのしていく心地。

今、花のお江戸は、なんだかとってもほんわかした幸せ気分に包まれていました。







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