「……行っちゃったね」
「うん……」
「さ、僕たちもおうちに帰ろうか」
「うん! 帰ろう」
「ああ〜、我が家に帰るのは、しばらくぶりだなぁ」

七つの海を股にかけた大冒険も、これで終わりです。
花のお江戸の小人たちと銭形氷河は、素敵な思い出をおみやげにして、懐かしい雨漏り長屋へ帰ることにしました。

ところが。

「ふっふっふっふっふ……。やぁああ〜〜っと見付けたぞ、このうすらとんかち! いったい今までどこで油売っていやがった! 壺ひとつ届けるのに、いったいどこまで行ってたんだっ!」

いつのまにやってきていたのでしょう。
銭形氷河の後ろには、花のお江戸の湯屋のご主人が、バックにおどろ線を背負って立っていたのです。
「あああああ〜っっ、だっ……旦那、これには深い訳が〜っっ」
「無駄口叩いてる暇はねぇよ! おめえの仕事は山ほどたまってるんだ。さっさと働け〜っっ!」
「はははははい〜っっ !! 」

――本当に、これが銭形氷河の幸せなのでしょうか?
滝のような涙で頬を濡らした銭形氷河は、湯屋のご主人にずりずりと引きずられて、彼の仕事場に強制送還されてしまったのです。

「氷河 お仕事頑張ってね〜!」
「頑張ってね〜」
これが銭形氷河の幸せなのだと信じている小人たちは、明るい笑顔で銭形氷河のお見送りです。

「あれ、でも、僕たちはいいのかな?」
「僕たちは、もう今日の仕事のあがりの時刻は過ぎてるみたいだから、先におうちに帰って明日からの仕事に備えよう」
「そうだね」
「では、おうちに向かってれっつごー!」

「ごー!」× 15

幸せの極致(のはず)の銭形氷河を見送った小人たちは、そうして、元気よく、懐かしい雨漏り長屋へと駆け出したのでした。







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