「さて、俺達はどうすっかな」
「もう俺たちの船はないしなぁ」
「とりあえず港へ行って、仕事探すか」
「んだな、俺達くらいの経験をもってりゃ、仕事なんかすぐ見つかるさぁ」
「なんてったって、海底神殿まで行ったもんなぁ」
「おう、こんな体験してるヤツなんて他にはいねぇよ」
「んだんだ、うはははは〜」

家路についた小人たちを見送った阿蘭陀行きの船の乗員乗客たちは、小人たちに勇気と幸せ(と楽観)をもらって、これまた至極前向きです。


前向きな阿蘭陀行きの船の乗員乗客たちが立ち去った後、その場に残っているのは――

「あの人面魚娘め、わざとこいつらを連れて帰らなかったな……!」
「ああいうタイプは根に持つんだ……ええいっ! やめろというのに、このタコっ!」

――クラゲとタコに好かれた異国の学者ふたりだけでした。

「これからどうする?」
「国に帰るにしても、まず先立つものが必要だ」
「そうだな……。私たちもあの船の乗員たちを見習って、前向きにいくか」
「前向きに行くしかないだろう」

結論は、つまり、そういうことです。
タコに好かれたカミュ物理学者とクラゲに気に入られたミロ医学者は、2人並んで、彼等が進むべき道を、前に向かって歩き始めました。

もう少し先の話になりますが、その後江戸界隈では、クラゲとタコを操る2人組の芸人の大道芸が大層な評判を呼んだとか。
これは、葛飾北斎の浮世絵にも残っている本当のことですよ。







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