ところ変わって、とある国。

ここには、それはそれは美しいけれど、少々性格に難ありな王子様が一人いらっしゃいました。
名を氷河王子様とおっしゃいます。

氷河王子様は、昔からこの国に伝わる魔法の鏡を持っていて、毎朝、暇つぶしに、
「おい、鏡。世界でいちばんいい男は今日も俺だろーな」
と尋ねておりました。

魔法の鏡は、そんな王子様に、毎朝、
「世界でいちばんいい男は、氷河王子様、今日もあなたで〜す♪」
と、馬鹿の一つ覚えのように答えるのでした。

実は、魔法の鏡には女鏡と男鏡の2つがあったのです。
白雪瞬ちゃんのお母様が持っていたのは女鏡。
氷河王子様の持っているのは男鏡。

女鏡は女性のことしかわかりませんし、男鏡は男性のことしかわかりません。
お后様の鏡が、お后様に
「鏡よ、鏡よ、鏡さん。この世でいちばん美しいのはだぁれ?」
と、尋ねられるたび、
「もちろん、それはお后様。あなたが世界でいちばん美しい」
と答えていたのは、実は、白雪瞬ちゃんが男の子だったからなのでした。




それはともかく、氷河王子様です。

ある日、魔法の鏡が、氷河王子様に言いました。

「えー。世界でいちばんいい男は、氷河王子様、今日もあなたです。ところで、今日はサービスで特別情報をお知らせいたします。世界でいちばんいい男は、氷河王子様、今日もあなたですが、世界でいちばん可愛い男の子は、現在、某国の森の奥で7人の小人と暮らしている白雪瞬ちゃんです」

「なに?」

何のきまぐれからか、いつもと違うことを言う魔法の鏡に興味を持って、氷河王子様は珍しく真面目に鏡の中を覗いてみました。


そこに映っていたのは――。


はっきり言って、滅茶苦茶氷河王子様好みの、超可憐・超清楚・超々キュートで超スイート、もひとつおまけで超お人好しな白雪瞬ちゃんだったのです。
鏡が、白雪瞬ちゃんのことを、『世界でいちばん可愛い“男の子”』と言ったことなど、白雪瞬ちゃんに一目惚れした氷河王子様の記憶域からはすっかり削除されてしました。

「俺は、絶対にこの白雪瞬ちゃんと結婚するぞ!」

氷河王子様は高らかに宣言して、勇んで白雪瞬ちゃんのところに出掛けていきました。
もちろん、セオリー通り、白馬に乗って、です。
女の子は、そーゆーものに弱いのだと、氷河王子様は陳腐に思っていたのでした。





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