さてさて、再び、白雪瞬ちゃんです。 大好きなお母様のいるお城を出て、森の中に分け入った白雪瞬ちゃんは、そこで親切な7人の小人さんたちに出会って、一緒に暮らすことになったのです。 小人さんたちの名前は、それぞれ、一輝、二輝、三輝、四輝、五輝、六輝、七輝。 7人とも額に向こう傷があって少々恐い顔をしていましたが、でもとても優しい小人さんたちでした。 小人さんたちは、素直で可愛い白雪瞬ちゃんを、まるで実の妹のように可愛がってくれました。 白雪瞬ちゃんは、そこでとても幸せだったのです。 一度にお兄さんが7人もできたようで、とても嬉しかったのです。 ですから、突然、小人さんたちのお家の前に白馬で乗りつけた氷河王子様に、 「白雪瞬ちゃん、どうか私の后になってください」 とプロポーズされた時には、どうしたらいいのかとてもとても悩みました。 白雪瞬ちゃんは、自分が男の子だということを知りませんでしたので、それについては少しも悩まなかったのですけれど、優しい小人さんたちとお別れするのは、とても嫌だったのです。 大好きなお母様との辛い別れを知っているだけに、またあの悲しみを味わう勇気は、白雪瞬ちゃんにはなかったのでした。 「でも、僕は……。僕は、小人さんたちのお世話をしなきゃならないの。小人さんたちは、僕がいないと、いつも朝寝坊するの」 これまで見たこともないほど凛々しい王子様の姿にうっとりしながら、白雪瞬ちゃんは頬を薔薇色に染めて言いました。 白雪瞬ちゃんのその様子を見て、氷河王子様は確信したのです。 (強引に迫れば、瞬はすぐに落ちる!) ――と。 しかし。 「ふん。貴様のように軽そーな男に、瞬をやれるか!」と一輝。 「ふん。白馬の王子だと! 超間抜けな奴だな」と二輝。 「ふん。悪趣味は死んでも直らないと言うぞ」と三輝。 「ふん。おまけに頭も悪そうだし」と四輝。 「ふん。馬鹿も死ななきゃ治らんそうだ」と五輝。 「ふん。瞬は俺のように質実剛健タイプが好きなんだ」と六輝。 「ふん。ふん。ふん。ふん!」と七輝。 一から七までの一輝に、合計10個もの『ふん』を連発されて、氷河王子様はすぐに悟りました。 自分の当面の敵は、一輝から七輝までの7人の小人どもだということを――。 ともあれ、そういうわけで、その翌日から、氷河王子様と一輝から七輝までの小人さんたちとの壮絶な闘いが始まったのです。 氷結リング、鳳凰幻魔拳、ダイヤモンドダストに、オーロラ・サンダー・アタック。 技の数では氷河王子様の方が上でしたが、一輝二輝三輝四輝五輝六輝七輝は、人数で勝っていました。 おまけに、白雪瞬ちゃんが一人の時を見計らって氷河王子様が強引に白雪瞬ちゃんに迫ろうとすると、必ずどこからともなく一輝二輝三輝四輝五輝六輝七輝が現れて、白雪瞬ちゃんは、 「やっぱり来てくれたんだね、小人さんたち!」 と嬉しそうに、一輝二輝三輝四輝五輝六輝七輝の側に駆け寄っていくのです。 氷河王子様は悔しくてたまりませんでした。 「瞬、俺のこの気持ちを受け入れてくれ。俺はもう、おまえなしでは生きていけない」 「でも、僕がいなくなったら、小人さんたちは小人さんたちだけになっちゃう……」 「あいつらは七人もいるんだ、どうとでもやっていける。だが、俺は生きていられないんだ、瞬、おまえが側にいてくれないと……」 「氷河王子様……」 (よし、もう一押し……!) と考えた氷河王子様が、何気に、白雪瞬ちゃんのアブないところに手を伸ばそうとすると、必ず、一輝二輝三輝四輝五輝六輝七輝の高笑いが辺りに響き渡り、どこからともなく飛んできた鳳凰の尻尾の羽が、いけない氷河王子様の手に突き刺さるのです。 ある時など、せっかく白雪瞬ちゃんを森の緑の草の上に押し倒すところまでいけたのに、またしてもどこからともなく現れた一輝二輝三輝四輝五輝六輝七輝が、氷河を白雪瞬ちゃんの上からずりずりずりと引きずり離してしまったこともありました。 その時ばかりは、さすがの白雪瞬ちゃんもちょっと残念そうな顔をしていて、どうしても一輝二輝三輝四輝五輝六輝七輝の邪魔を防ぎきれない自分自身に、氷河王子様は苛立ちを覚えてしまったのでした。 瞬の心は、もう少しで俺のものになる! ――そう考えた氷河王子の採った最終手段。 それは勿論。 毒りんご、です。 もう、この手しかありません。 グリム童話最大にして最高・最強の奥義、毒りんご。 これっきゃないのです! |