さすがにこの技の威力は絶大でした。 それまで、氷河のダイヤモンド・ダストはおろか、オーロラ・サンダー・アタックもオーロラ・エクスキューションも難なく防いでいた一輝二輝三輝四輝五輝六輝七輝が、それはもうあっけないほどあっさりころり。 ガラスの棺に入れられてずらり並んでいる小人さんたちに、氷河王子様は大満足でした。 ――氷河王子様を残酷だと言うことは、誰にもできないことなのかもしれません。 オーロラ・エクスキューションで敵を倒すのも、毒りんごで敵を倒すのも、結果は同じことなのですから。 まして、氷河王子様をそういう行動に駆り立てたのは、白雪瞬ちゃんの清楚な美しさ、白雪瞬ちゃんへの氷河王子様の愛! だったのですから。 一輝二輝三輝四輝五輝六輝七輝の棺の上に、いつまでも涙の雨を降り注いでいる白雪瞬ちゃんに、氷河王子様は言いました。 「瞬。そうやって嘆いていても、一輝二輝三輝四輝五輝六輝七輝は生き返るわけじゃない。こいつらのことは忘れて、俺と幸せになろう。それが、こいつらの望みでもあるはずだ」 『物は言いよう』とは、まさにこのこと。 これで白雪瞬ちゃんの心は自分のものになるだろうと、氷河王子様は思っていました。 白雪瞬ちゃんには他に頼れる人もいないのですし、白雪瞬ちゃんが実はとても寂しがりやだということも、氷河王子様はちゃんと気付いていました。 ところが。 白雪瞬ちゃんの返事は思いがけないものだったのです。 「氷河王子様。氷河王子様は王子様なんでしょう?」 「な…なんだ、急に」 「王子様なら……王子様なら、小人さんたちにキスをして生き返らせることができるでしょう !? 」 「な……なにーっっっっっ !!!!!????? 」 白雪瞬ちゃんの涙に濡れた瞳は真剣そのもの、必死の色。 氷河王子様は、白雪瞬ちゃんの迫力に気おされて、思わずごくりと息を飲んでしまいました。 そんな氷河王子様に、白雪瞬ちゃんはすがるように言いました。 「僕だって……僕だって、氷河王子様が僕じゃない人にキスするのはとってもとっても嫌だけど、だけど、小人さんたちがこのまま死んでしまうのはもっと嫌です… !! 小人さんたちは、お城を出て、ひとりぽっちで泣いていた僕を慰めて、励ましてくれたの! 住むところと、食べるものをくれたの! 小人さんたちは、僕をひとりぽっちでなくしてくれたんだもの…! お願い、氷河王子様! 氷河王子様のキスで小人さんたちを生き返らせて! そうしてくれたら、僕、小人さんたちが何て言って反対したって、氷河王子様のお嫁さんになります! だから……だから、どうかお願いします…!」 「瞬……」 氷河王子様は、涙ながらの白雪瞬ちゃんの訴えに、胸を突かれる思いでした。 白雪瞬ちゃんが小人さんたちをどれほど大切に思っていたのかということくらい、氷河王子様はちゃんと知っていたのに。 氷河王子様を愛し始めている白雪瞬ちゃんが、それでも一輝二輝三輝四輝五輝六輝七輝の許を離れようとしないのは、白雪瞬ちゃんが、あの憎たらしい小人たちを兄のように慕っていたからなのだということも、一輝二輝三輝四輝五輝六輝七輝たちが、彼らなりに白雪瞬ちゃんを愛していたのだということも、氷河王子様はちゃんと知っていたのです。 それなのに、氷河王子様は、一輝二輝三輝四輝五輝六輝七輝たちに、情け容赦なくグリム童話最大の奥義を放ってしまったのでした。 白雪瞬ちゃんを力いっぱい抱きしめたいという思いに負けて。 白雪瞬ちゃんの気持ちも考えず。 自分のことしか頭になくて――。 |