魔眼


〜 たれたれぱんださんに捧ぐ 〜







星矢が、瞬と氷河の引きこもっている古い洋館を訪れたのは、咲いたばかりの桜を春の嵐が吹き飛ばしてしまった翌日のことだった。

春の嵐は、か弱い桜の花びらだけでなく、重い灰色の雲もどこかに運び去り、星矢の頭上には少し青みを帯びた水色の空だけが広がっている。
嵐のせいで断念せざるを得なくなった花見の代わりに、星矢は、もう半年以上も音信不通になっている二人の仲間の許を訪ねることを思いついたのだった。

闘いもなく、戦友との付き合いより大事な付き合いが生じた二人とはいえ、いい加減に冬ごもりは終えていい時期である。
星矢は、そろそろ、新婚ごっこは堪能し尽くしたに違いない二人を、城戸邸に連れ戻すつもりで、その洋館を訪れたのだった。

いくら二人だけの生活が楽しいとはいえ、生死を共にして闘ってきた仲間に半年間も音信不通というのは不人情すぎる。
星矢は、二人を叱りつける気でもいた。



からりと見事に晴れあがった空。
星矢は、すぐにまた、気の置けない仲間同士での生活が自分のものになると信じていた。

沙織が特に許し、二人に与えた、その洋館の門をくぐるまでは。






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