その日の夕食にも氷河は姿を現さなかった。

嘘のように胸の痛みが去った星矢が、あれこれ尋ねても、瞬は、
「沙織さん、何にも言ってないんだね」
と、はぐらかすばかりで、何も語ろうとはしない。


それは、星矢が期待していたのとは全く様相を異にする、重苦しいディナーだった。
瞬の口が重いせいで会話も弾まない。

星矢の目の前にいる瞬は、彼が以前見知っていた瞬とは別人のようだった。
以前の瞬は、決して騒がしいお喋りではなかったが、人の話をいつも楽しそうに聞いてくれ、そして、機転の聞いた返事を返してくれていた。

だが、今、星矢の前にいる瞬は、機転どころか、その微笑みさえ作りものめいて、妙に空々しい。

瞬には、以前の精彩がまるでなかった。
星矢の知っている瞬は、いつも――闘いを厭って悩んでいる時にすら――輝くばかりの生気に満ちていたというのに。







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