おそらく、シュンを本当に狂わせたのは、シュンが目覚めた時、氷河が彼に告げた気遣わしげな言葉だった。

「瞬、夕べは済まなかった。身体は――大丈夫か?」


言葉も心も身体の感覚も、すべてが混乱し錯乱していたあの時間はもう通り過ぎてしまった後だというのに、氷河がシュンを『瞬』と呼んだ。

それまで、シュンは、そう感じてしまう自分を不可解と思いながらも、氷河の手で再生させられたような感覚に、幸福感のようなものを感じていた。

が、『瞬』を呼ぶ氷河のその言葉に触れた途端に、シュンは、耐えようのない屈辱感に支配されてしまったのである。





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