「明日はクリスマス・イブだね。氷河、プレゼント何くれるの」

ベッドと、天使の絵しか残っていない氷河の部屋で、シュンは氷河に尋ねた。

「…………」

氷河は何も答えない。
彼にはもう何も残っていないのだ。
明日にはこの部屋も追い出されるのだということを、彼がシュンに言えずにいるのを、シュンは知っていた。

「プレゼントくれなかったら、僕、もう氷河には会わないよ」

自分の残酷さに快ささえ感じながら、シュンは、氷河に告げた。


盗みでも強盗でもすればいいのである。
瞬との最期の約束を破って。

さもなくば。


(あの天使の絵が僕のものに――悪魔の僕のものになる…!)


そのいずれかだろうと、シュンは思っていた。

氷河は、夜毎彼を受け入れてくれるシュンに溺れていたし、彼自身、シュンから離れられないと言っていた。

彼が瞬との約束を破り罪を犯せば、シュンは、彼を堕落させるという本来の目的を果たすことができ、天使の絵を贈られたたなら、あの絵をずたずたに切り裂くという勝利の快感を得ることができるだろう。


どちらにしても、瞬の優しさは、シュンの悪意に負けることになる。

勝利の予感に酔い、その予感に、心の奥底で苦しみ涙を流しながら、シュンは明日という聖なる日を待った。





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