瞬に変化が見えてきたのは、彼の兄の生還がきっかけだった。 一時は敵対もした兄が、生きて、以前の優しい兄になって、瞬の元に戻ってきたのである。 瞬が毎日兄の側で幸せそうにしている様を見せられて、僅かの妬ましさも感じないと言えばそれは嘘になるが、それでも、泣いている瞬を見ているよりはずっとマシである。 氷河は――氷河も嬉しかった。 瞬が涙も沈んだ表情も見せずに、毎日笑っていてくれるのだから。 それは、昔から――クワガタムシ事件の昔から――氷河の望んでいた光景だったのだ。 しかし、やがて、放浪癖のある一輝は城戸邸を出ていってしまった。 瞬を一人だけ、“仲間”の許に残して。 一輝が城戸邸を出ていったことを知らされて、氷河は途端に不安になったのである。 瞬がまた以前の、感受性ばかりが強い、兄に見捨てられた臆病な子供に戻ってしまうのではないかと。 だが、氷河の心配は杞憂に終わった。 兄が城戸低から姿を消しても、瞬が沈んだ表情を見せることはなかった。 それどころか。 |