とりあえず、氷河は、廊下を歩いているペットントンに足を引っ掛けて転ばしてみた。
ペットントンはぼよんぼよんと二回転して、何事もなかったかのように歩き続けた。

ラウンジの、ペットントンの座るクッションの下にぶーぶークッションを置いてみた。
ぶぶぶぶぶー★と音を立てて、それは潰れてしまった。

ペットントンの履く靴にガビョウを入れてやろうとしたのだが、ペットントンが靴を履いていないことに気付き、これは挫折。

更に、氷河は、ペットントンの飲むミルクに塩を入れてみたが、ペットントンは平気でそれを飲みほしてしまった。


自分のやること為すこと全てに、全く効果が出ないのに、氷河はすっかりおかんむりだった。



そんな氷河に、呆れてしまったのが星矢たちである。

「氷河―、おまえ、なに幼稚なことやってんだよ」
星矢に『幼稚』と言われてしまっては、氷河もおしまいである。

「見てわからんのか。あの化け物を追い出そうとして必死なんじゃないか!」
「そりゃあ見てりゃわかるけど、でも、やり方がさ、おまえにしちゃ陰険さが足りないぜ」

「全くだ。いつものおまえなら、アメリカかロシアの宇宙情報局にペットントンを売り渡すとか、せめてマスコミにリークするとかしているところだろう」
紫龍は、氷河が本来持っている陰険さを明確に看破している。
しかし、その紫龍とて、瞬に捧げる氷河の純愛(?)の質までは把握しきれていなかった。

「そういう陰湿なやり方で、あの化け物が城戸邸を出ていく羽目になったら、瞬が泣くじゃないかっ! そんなことができるかっ」

「ぶーぶークッションのせいで出てくのはいいのかよ」

「それはいいんだ」
氷河は、自分の方法論にいささかの迷いも感じていない。
「その程度の嫌がらせに屈したのなら、後腐れもない。あの化け物の瞬への懐き方もその程度のものだったということになる」


氷河の訳のわからない判断基準に、星矢たちは肩をすくめることしかできなかった。






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