人の求めるものは、人によって異なるだろう。
それは、生きることの意味であったり、夢であったり、愛情であったり、漠然とした幸福であったり、あるいは、地位や名誉や経済的な優越であるかもしれない。

だが、人の求めるもの・欲するものとは、突き詰めて考えれば、“求めること”・“欲すること”なのだ。
それは、生きている人間の、過去にも今にも未来にもあったもの、あるもの。

“求めるもの”がない人間は、生きてはいない。
“欲するもの”がない人間は、生きてはいけない。
生きて、いられないのだ。


そして、“求めるもの”がある人間は、生きていて、これからも生きていける。
それを失った時に、身体の生死はともかくも、人の心は死ぬのである。


「僕はね、星矢。たとえ身体が死んでしまっても、求め続けるよ。僕の大切な人たちが幸せでいてくれるように……って」

「…………」


瞬の大切な人たち。
それは、過去と現在と未来とに存在する全ての人間ではないか。





『 だから、僕は死なないんだ。
  永遠に――。          』




言葉にはしなかった瞬の言葉が、星矢には聞こえたような気がした。






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