talkative silence


〜 月湖さんに捧ぐ 〜






彼は“無口でクールな男”のはずだった。

少なくとも、昨日までは。

彼自身がそう自称していたし、修行の地も東シベリア、使う技も何となく冷却系だったから、星矢たちも何となくそうなのだろうと思って異議を差し挟むことはなかった。
事実、数年ぶりに仲間との奇跡の再会を果たしたその時にも、彼は昔馴染みとの再会に感激した素振りも見せず、ひたすら沈黙にも似た寡黙を通していたのである。

その彼が、今朝からどこか様子がおかしい。
どこかというより全てがおかしい。
何もかもがおかしかった。


瞬の兄によってギャラクシアン・ウォーズなる見世物が破茶滅茶な終わりを迎えたその日から、彼は豹変した。






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