誰もいない――。


俺の足を掴みあげて、おまえの許に行こうとする俺を妨げるものは、シベリアの氷のような雪なのか、瞬のいる島の砂浜のものなのか。

地の果てまで白いもので覆われた、氷の大地。
白くないものは空の青だけ。

それでも、俺は耐えることができた。
俺は一人じゃなかったから。



風の音。
瞬の瞳を思い出しさえすれば、身を切りつけるようなその風も、俺を優しく包むそよ風のように感じることができた。

同じ風が、瞬の身体をも包んでいるような気がして――。



打ち寄せる凍った波。
何かを伝えようとして伝えられずにいるような、無言の波。

瞬も、俺とおなじ淋しさに耐えているのだろうか――?






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