「で、緑は、どんななんだ?」

氷河は、それ以上、自分や一輝についての考察を続ける気はなかった。
そんな不愉快なことより、瞬のことを考えていた方が、よほど気分がいい。

「緑?」
「瞬は緑、だろう」
「読みが浅いな。瞬は緑なんかじゃない」
「ピンクだとでも言うつもりか」

もし一輝が『そうだ』と答えたら思い切り嘲笑ってやろうとして準備体勢に入った氷河に、瞬の兄が返してきた答えは、慮外――氷河にしてみれば――のものだった。

「黒だ」

「…………」

氷河には、一輝の感性がまるでわからなかったのである。
瞬の――あの、生まれたばかりの朝の光を受けて輝く新緑のような瞬の――色を、よりにもよって黒だと言い切る男の視神経と思考回路を、思い切り疑ってしまう。




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