星が天に昇っていくように、蛍が舞っていた。 幼い頃に、七夕の飾りをつけた笹を流したことのある川。 あれは、庭に小さな竹林を構えた近所の家の庭から、星矢がくすねてきた小さな笹だった。 城戸邸に養われていた子供たちが、折り紙にそれぞれの願いを書いて、みんなで作った七夕の飾り。 自分たちの願いは川を流れてやがては天に至り、いつかきっと良い日が訪れるに違いないと信じて、子供等はこの川に笹飾りを託したのに、瞬たちは翌日、川にゴミを流すのはよろしくないと大人たちから散々に叱られた。 今の子供はそれを知っているのか、そもそも短冊をつけた笹を川に流すという慣わし自体を知らないのか、七夕の夜だというのに、そんなことをしに来ている者の姿はない。 年に一度の牛と織女の逢瀬を祝うように瞬く星に包まれた川原にいるのは、ほの白い光を放つ数十匹の蛍と、瞬と、その瞬に付いてきた雪と氷の聖闘士だけだった。 「冷たい光だね」 「そうか?」 氷河は、去年よりも更に数の減った蛍の放つほの白い光を眺めながら、横にいる瞬を気にしていた。 彼は、この1年間の自らの苦労を――否、徒労を――思い出していたのである。 すべては、去年、この川原から始まったのだ。 |