去年の七夕の夜、氷河は突然、自分が瞬を好きだということを自覚した。

以来、彼は瞬の目を自分に向けるために涙ぐましい努力を重ねてきたのである。


8月には、水着はプレゼントするからと口説いて、瞬を海水浴に誘った。
そして、氷河が用意したピンクのビキニパンツを見た瞬に、盛大に頬をぶたれた。


9月はぶどう狩りに誘ってみた。
ぶどう園併設ワイナリーでの試飲コーナーで、ジュースと思い込んでワインを飲み干した瞬は、その場でばったーん★と倒れてしまった。


10月の体育の日には、なぜかギリシャ・サンクチュアリで行なわれた運動会の二人三脚のパートナーを瞬に頼んでみた。
許諾の返事をもらい、喜び勇んでレースに臨んだ氷河が、走る際に手を瞬の肩に置くべきか、はたまた腰にまわすべきかを悩んでスタートできずにいるうちに、レースは終わってしまっていた。


11月の文化の日には、格調高く、絵画展に瞬を誘った。
瞬は、
「これのどこが絵画展なの?」
と、氷河の趣味を疑ったようだった。
それは、やふぅオークションで、壮絶な争奪戦を繰り広げて競り落とした、『車田正美原画展・初日・先着100名様は作者と握手できます』チケットだったのだが。


12月のクリスマス。
この日を決戦の日と決めて、瞬をホテルに誘ったが、瞬はホテルのレストランの『オールナイト・ケーキブッフェ』に小宇宙を燃やしていた。


1月の正月。
初詣でに誘うも、大混雑の川崎大師で人の波に押され、瞬と離れ離れになる。


2月は聖バレンタインデー。
14日0時から15日0時まで、氷河はどきどきしながら瞬からのプレゼントを待っていたのだが、結局瞬からチョコレートを貰うことはできなかった。


3月のホワイトデー。
バレンタインデーにチョコレートを贈られていないことを無視して、瞬にケーキをプレゼントしたが、瞬には意味が通じていないようだった。


4月の花見。
舞い散る桜の花の下の瞬に見とれているうちに、無事(?)終了。


5月の子供の日。
瞬に柏餅を買ってきてやったところ、
「どーして、ちまきじゃないの?」
と責められ、答えに窮す。


6月は、某紫陽花寺に瞬を誘った。
「このお寺、別名縁切寺って言うんだって」
という瞬の一言にがーん★



――とまあ、そんなふうな1年を過ごして、再び巡ってきた七夕の夜なのだ。






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