「以前から言おうと思っていたんだが……」

神妙な顔で自分の前の椅子に腰掛けた瞬に、一輝はおもむろに用件を切り出した。

「おまえ、あんな情けない男のどこがよくて一緒にいるんだ。態度だけでかくて、いつもおまえに庇われてばかりいて――俺は奴を見ていると吐き気がしてくるぞ」

「僕だって、いつも兄さんに庇われてばかりいますよ」
「あれは俺が勝手にしゃしゃり出てるだけで、おまえは本当は――」

瞬自身は決して認めようとはしなかったが、それは一輝を含めた全聖闘士の一致した見解だった。
瞬は、一輝を立てるために、わざと兄に庇われてやっているのだ――というのは。

事実はどうなのか、一輝は知らない。
一輝は、プライドにかけて、それを瞬に確かめることはできなかった。
が、それは妥当な見方ではある――と、一輝も思ってはいたのだ。

「…………」

一輝は、そして、ふと思ったのである。
瞬がそうなのだとしたら、氷河もまたそうなのだという可能性はないだろうか。

(あの馬鹿が、まさか、な……)

一輝は左右に頭を振って、その馬鹿げた考えを振り払った。






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