|
「僕は兄さんがどうするか知ってます」 瞬は、氷河との経緯を兄に告げて、いっそさっぱりしたような表情になった。 「兄さんは、ここで食い下がったりしない。腕力や権威で僕に言うことをきかせようとしたりもしない。以前のように俺だけを見ていろなんてことも言わない。兄さんには誇りがあるから。みっともないことが大嫌いだから」 「…………」 その通りだった。 ここで、『以前の、兄だけを慕っていたおまえに戻ってくれ』とは、一輝には口が裂けても言えなかった。 彼に言うことができたのは、 「だが、許さん」 というただの一言。 その言葉が、まるで負け惜しみのように聞こえることが、一輝のプライドを傷つけた。 |