「で、この際だから、あなたたちにもご出馬願おうと思って」 星矢たちが恐れ続けていたその言葉を、沙織はあっさりと口にした。 神(除くアテナ)をすら恐れることなく立ち向かっていった5人の青銅聖闘士の頬が、揃って青ざめる。 「ご…ご出馬……というのは、我々にリリィちゃん退治をしろということですか?」 紫龍がどもりながら尋ねると、沙織はこれまたあっさりと、 「そうね。コックローチ・バスターズ第二期生っていう設定もいいかもしれないわね」 事もなげに頷いてみせる沙織の前から、青銅聖闘士たちは無意識のうちに2、3歩後ずさった。 「あら、嫌なの?」 沙織は、星矢たちの反応を見越していたかのような口ぶりだった。 予想していた通りの事態に直面しても、人は慌てない。 もちろん、気を悪くすることもない。 沙織は、相変わらず、にこやかな慈愛の笑みをたたえていた。 「仕方ないわねぇ。じゃあ、あんまり聖闘士としての力は発揮できないんだけど、もう一つの仕事の方をやってもらおうかしら」 「もう一つの仕事……?」 神ならぬ身の青銅聖闘士たちは、沙織の次の言葉など予測もできない。 彼等にできたのは、目いっぱい嫌な予感に囚われつつ、沙織の続く言葉を固唾を呑んで待つことのみ。 で、沙織の口から飛び出てきた言葉は、 「モデルのお仕事なんてどうかしら」 ――だった。 |