「これってさぁ、要するに城戸邸から出られないだけのことだと思えばいいじゃん」 「そうだな、いつもと大して変わらないな」 星矢と紫龍にとって、そこは、日常の延長線上にある空間だった。 「俺は至極快適だぞ」 一輝には、そこは、楽園だった。 無論、その実験用施設を一輝の楽園たらしめているのは、氷河その人である。 最愛の清らかな弟に毎晩閉め出しを食っている氷河の情けない顔が、一輝を楽園の住人にしていた。 「うー」 一輝と同じ理由で、氷河にとって、そこは地獄だった。 彼は、地獄の住人らしく、朝から晩まで、飢えに飢えた餓鬼畜生のごとき目で辺りを睥睨しながら、苦渋の日々を過ごすことになったのである。 しかし。 氷河に死の兆候は表れなかった。 当然である。 健康な肉体を持つ男子は、××ができないくらいのことでは(たとえそれが激しい苦しみを伴うにしても)死なないのである。 氷河は、死ぬどころか、体調すら悪くならない自分自身に立腹しまくっていた。 |