「あー、じゃあ、我々も部屋に戻るとするか」
紫龍がそう言って、椅子に腰掛けていた一輝の肩を叩く。 

「何を言う。俺はここで氷河の見張りを――」
「いーから、来いとゆーに!」

この場に居座り続けるのは馬鹿の見本とでも言いたげな紫龍に急き立てられて、一輝は嫌々ながら、彼と共に廊下に出ることになった。


「おい、氷河の奴、もしかして傷付いてるのか」
「貴様に言われたのならまだしも、星矢に、だからな」
「…………」

皮肉も嫌味も忠告も親切も、誰が言い、誰が行なったかで、受け取り手の衝撃も喜びも違ってくるものである。
こんなにも簡単に氷河をへこますことができるのなら、ただの1日でもいいから星矢になりたいと、思わず天に願ってしまった一輝だった。






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