フォルトナートがおまえに血迷っていることは聞いている。 あの男を恐れることはあるまい。 確かに、俺はあの男の率いる軍隊に負けたが、それはあの男が有能だったからではなく、俺の領民たちの裏切りがあったからだ。 俺のこれまでの統治が過酷に過ぎたのだろう。 おまえの今の境遇も、同情はするが軽蔑はしない。 大切なのは生き抜くことだ。 俺が多くの敵を――教皇派の者共を、俺に反逆を企てた奴等を、そして裏切り者たちを――惨殺してきたことに比べれば、敵を利用して生き抜くくらいのことは、罪ですらあるまい。 心を偽って、憎い敵の庇護に甘んじるのは屈辱かもしれないが、生きるために耐えてくれ。 生きるために何かをしなければ、座して死を待つようなもの。 今はそういう時代なのだ。 ここはそういう国なのだ。 おまえに夢中になっているというあの男を、利用するだけ利用してやればいい。 おまえが生きるためだ。 1262.7.11 ヴェローナ領主にして、パドヴァ・フェラーラの支配者
エッツェリーノ・ダ・ロマーノ |