「なんだよ、あいつ! 前はなんかって言うと瞬、瞬、瞬で、瞬に貼りついてたくせに!」
氷河がラウンジを出ていくと、星矢は彼の出ていったドアに向かって唇を尖らせた。

「うん……」

「気にすんなよ、瞬。あんな奴のことなんか」
「…………」

そう言われても、気にならないわけがない。
氷河は、いつも本当に瞬に優しくしてくれていたのだ。

殺生谷での闘い以前は。


「僕、氷河に嫌われちゃったのかな」

「そんなことないだろ、おまえを嫌う奴なんてこの世にいるわけない」

いないわけがないことはわかっていたのだが、
「うん……」
瞬は、星矢のために頷いた。
そして、涙ぐんだ。 



殺生谷。

氷河は、瞬の兄のために傷付いた。
否、兄を慕う弟のために、彼は傷を負ったのだ。




「…………」

紫龍が、無言で、仲間たちのやりとりを見詰めていた。






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