あの少女に借りていた服の帯がほどかれているのがわかった。
目を閉じていても、氷河が今自分のどこを見詰めているのかがわかった。

氷河の視線は、熱くて痛いのだ。

普段の嫌味や高慢や、優しささえない、静かに爪を砥ぐ獣のような視線。
そんな視線で焦らされているくらいなら、早く襲いかかられて、その牙を我と我が身に突き立ててくれとさえ思うような視線。

「氷河……!」
言外に、『早く』。

瞬はまだ唇に触れることさえしてもらっていないのに、既に幾度も交わった後のように肩で息をしていた。
視線に犯されるだけで終わってしまいたくない。
だから、早く氷河に触れてもらいたかった。

氷河の視線が少しばかり和らぐ。
目を閉じていてもそれが感じられるほどに、和らいだ視線すら、氷河のそれは瞬には強い刺激だった。

「今生になるかもしれないから、死ぬほど可愛がってやる」
その声音にはからかいも混じっていたが、それは、からかいだけでできている言葉でもなかった。






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