「また、君か……」 アルビオレ先生は、溜め息をつきながら、ロシアのお友達のところにやってきました。 ロシアのお友達のガンつけは、アルビオレ先生もとっても恐かったのですが、可愛い教え子たちを守るためになら、アルビオレ先生はどんな強敵にも立ち向かっていくのでした。 「氷河くん。みんなが泣いているじゃないか。どうしてこんなことをするんだい? 氷河くんは、そんなにミルメークが好きなのかな?」 アルビオレ先生はとってもハンサムで優しいのに、未だに独身です。 それは、きっと、ロシアのお友達がなぜこんなことをしたのかもわからないような先生だからなのでしょう。 「さあ、答えなさい。どうしてこんなことをしたんだい?」 アルビオレ先生にもう一度尋ねられたロシアのお友達は、反抗的な目でアルビオレ先生を睨みつけました。 それから、ちらりと瞬ちゃんを見ました。 そうしたら。 何ということでしょう。 瞬ちゃんは――瞬ちゃんも、アルビオレ先生と一緒に不思議そうな顔をして、ロシアのお友達を見詰めていました。 「…………」 ロシアのお友達は、そんな瞬ちゃんを見て呆然としてしまったのです。 それはそうでしょう。 どうしてロシアのお友達がこんなことをしたのか、瞬ちゃんにはわかっていないのです。 そのことに気付いたロシアのお友達は、一瞬泣きそうな顔になりました。 でも、泣き顔を瞬ちゃんに見せるわけにはいきません。 そんなのカッコ悪いからです。 ロシアのお友達はぎゅっと唇を引き結び、二つの拳をきつく握りしめました。 そして、背中でむせび泣きながら、脱兎のごとく、教室を飛び出したのです。 初恋はいつも切ないもの。 酸っぱくて、時には痛みも伴うもの。 誰もが一度は通るその道に、ロシアのお友達は今やっと一歩を踏み出したばかりでした。 校庭の銀杏の木の下で、ロシアのお友達は声を殺して泣きました。 男の子ですからね、わんわん泣いたりはできなかったのです。 それが、ロシアのお友達の男の美学でした。 「氷河……」 教室の窓から、瞬ちゃんが心配そうに、銀杏の木の下のロシアのお友達を見詰めています。 ロシアのお友達は、本当は、そんなに悲しむ必要はなかったみたいですね。 |