2人がお城を出たところで、小人さんのダンスの曲と共に、お昼のお知らせのアナウンスが流れました。 「お弁当の時間だね♪ マーマのとこに戻ろ」 「うん」 ロシアのお友達には、アナウンス嬢の声が救世主の声のように聞こえました。 打ち続く名誉の負傷のせいで疲れ切っていたロシアのお友達は、一刻も早くエネルギー補給をしたかったのです。 「瞬、こっちだ」 ロシアのお友達は、瞬ちゃんの手をとると、順路の看板が示している矢印とは別の方向に向かって歩きだしました。 遊歩道沿いの広場の中を突っきろうという魂胆です。 広場の緑の芝生の中には、ところどころにお花畑があって、その中を仲睦まじく歩いている2人の様子はほんわかほのぼの、実に幸せで平和な光景でした。 ──が。 「ええっ !? 氷河が消えちゃった !? 」 せっかくほんわかほのぼのしていたというのに、瞬ちゃんの視界から、ロシアのお友達の姿が忽然と消えてしまったのです。 慌てた瞬ちゃんが周囲を見回すと、ロシアのお友達は、なぜか芝生の真ん中にぽっかりと口を開けた、深さ1メートルほどの穴の中にいました。 そして、その穴の脇には、『足元注意』と書かれた幅3センチほどの大きさの(小ささの?)看板を持った小人さんの彫刻──。 9個めの小人さん彫刻です! でも、今は、小人さんのスタンプを押すことより、ロシアのお友達救出の方が先。 「氷河、僕の手につかまって」 「瞬」 ロシアのお友達は、なるべく瞬ちゃんに負担をかけないように、タイミングを見計らって穴の中でジャンプしました。 瞬ちゃんは、ロシアのお友達を助けるために、持てる力の全てを使いました。 その結果、愛の一本釣り救出法が発動され、ロシアのお友達はびょ〜〜ん★ と、2、3メートルほど穴の外に飛ばされてしまったのです。 ロシアのお友達の空中遊泳に伴って、例によって例のごとく、ロシアのお友達のリュックもびょ〜〜ん★ と空中飛行、リュックの中のおやつも綺麗な放物線を描きながら芝生の上に落下していったのでした。 「ひどいよね。こんなとこに落とし穴があるなんて!」 「落ちたのが、瞬じゃなくてよかった」 「氷河……」 こんな場所に落とし穴がある理不尽への憤りより、自分の身体の痛みより、まず最初に瞬ちゃんの身を気遣うロシアのお友達。 瞬ちゃんは、ロシアのお友達のその言葉に胸を打たれました。 「こんなに傷だらけになってるのに、僕のことを考えてくれるなんて……。ありがとう、氷河!」 感激のあまり、ロシアのお友達に抱きついてしまった瞬ちゃんの体のぬくもり。 ロシアのお友達の擦り傷・打撲の傷みは、即行で、アナザーディメンションに飛んでいってしまったのでした。 |