おなかいっぱい、胸いっぱいで、ロシアのお友達と瞬ちゃんは、手をつないで午後の陽射しの中に飛び出しました。 「今度は、どっち行こうか?」 ロシアのお友達の勘に従うのがいちばんと思った瞬ちゃんが、ロシアのお友達にそう尋ねた時。 『小人さんの森彫刻高原』の片隅にあるベンチに、瞬ちゃんはアルビオレ先生の姿を見つけたのです。 そう言えば、瞬ちゃんたちよりかなり遅れて、アルビオレ先生に引率された2年生のお友達も、『小人さんの森彫刻高原』に着いていたはずなのでした。 クラスのみんなは、彫刻探しに行っているのでしょう。 アルビオレ先生はひとりきりでした。 ひとりでベンチに座っているアルビオレ先生は、なんだかとても寂しそうでした。 「アルビオレ先生―!」 瞬ちゃんがロシアのお友達と手をつないで、アルビオレ先生のところに駆けていくと、アルビオレ先生は、驚いたような顔をして、ベンチから立ちあがりました。 「瞬! 氷河くんも!」 それまでなんだか寂しそうだったアルビオレ先生の顔が、ぱっ☆ と明るくなります。 アルビオレ先生は、瞬ちゃんとロシアのお友達が遠足に参加できないせいで、学校で泣いているのではないかと心配していたのでした。 でも、どんなに瞬ちゃんが心配でも、アルビオレ先生の生徒は瞬ちゃんだけではありません。 他にどうしようもなくて、みんなを連れて『小人さんの森彫刻高原』までやってきたアルビオレ先生でしたが、瞬ちゃんとロシアのお友達を学校に置いてきてしまったことを、アルビオレ先生はやっぱりとっても後悔していたのです。 「来ていたのか!」 「はい! 氷河のマーマとスーパーのお姉さんたちが連れてきてくれたの」 「ああ、あの元気のいいお母さんね。そうか、それはよかった」 ほっと安心したアルビオレ先生が、傷だらけのロシアのお友達を見ると、ロシアのお友達はムッ★ とした顔で、アルビオレ先生を睨んでいました。 「追い返すのか」 「え? どうしてだい」 「3年生は白クマ動物園で、動物の飼育の見学だって、カミュの奴が……」 「今から行っても、白クマの火の輪くぐりショーは終わってるさ」 「そうか」 どうやら、追い返される心配はなさそうです。 ロシアのお友達は、ちょっとだけ(顔には出さずに)ほっとしました。 「でも、カミュ先生は君と瞬を引き離そうとしたんじゃなく、君のためを思って、君に厳しくするんだよ」 「オンナにモテなくてひがんでるんだって、マーマが言ってた」 「そんなことはないだろう。どうだい、君のマーマとお似合いじゃないかな?」 笑いながら言うアルビオレ先生を、ロシアのお友達はムスッとしたまま指差して言いました。 「……俺は、おまえの方がいい。弱そ……甘そうだから」 ロシアのお友達が言い直したのは、どうやらアルビオレ先生が自分たちの味方らしいと判断したからです。 こういうことに関しては、ロシアのお友達はとてもお利口でした。 「ははは。私は甘いか。じゃあ、甘いついでに、いいことを教えてあげよう。この先の『小人さん広場』に行ってごらん。彫刻がいくつかあるよ」 瞬ちゃんが楽しそうなのを見て、安心したのでしょう。 アルビオレ先生はにこにこしながら、教えてくれました。 |