一方、その頃、マーマたちのところには、アルビオレ先生が来て何やら話し合っていました。

「氷河くんはイレギュラーな参加ということになりますが、帰りだけでもクラスのみんなと合流する方がいいと思いまして……」

遠足というのは、普段行かないところに行って見聞を広めるためだけのものではありません。
教室の中では知る機会のないお友達の新たな側面を発見したりして、クラスメイトたちの友情を深めるための催しでもあるのです。

アルビオレ先生の提案を聞かされたマーマは、途端に愛想が良くなりました。
それは、ロシアのお友達と同じように、直感で、アルビオレ先生は弱い――もとい、甘い先生なのだということに気付いたせいだったかもしれません。

「まあまあ、先生お茶でもどうぞ♪ 私としましても、氷河と瞬ちゃんが引き離されるようなことさえなければ、何も異存はありませんのよ」
「そうですか。それでは……」

「ささ、先生、お菓子もどうぞ♪ それでね、先生、うちの子なんですが、ちょっと乗り物に弱いらしくって、ここに来る時も酔ってしまいましてねぇ」
「氷河くんの座席は、前の方にするように手配しますので……」

「もちろん、瞬ちゃんは氷河のお隣りの席にしていただけますわね? うちの氷河ときたら、酔い止めは全然効かないのに、瞬ちゃんの膝枕があると、車酔いなんてどこへやら、すっかり元気になってしまう体質なんですの。まあ、むやみに薬を飲ませたりするより、自然治癒の方が体にもよろしいですわよね」
「はぁ……。私のほうで指示しなくても、氷河くんの隣りは必然的に瞬になると思います」

少々疲れた口調のアルビオレ先生と違って、マーマは元気いっぱいです。
「まあぁぁ〜! それって、氷河と瞬ちゃんの仲がクラス公認ってことですわよね〜♪」
「はあ……。まあ、これはもう、認めざるを得ないと言うか何と言うか……」

「ああ〜! なんて素晴らしいクラスなのかしら。級友の幸せを暖かく見守り協力する思い遣りと友情は、本当に素晴らしいですわ! 『ロシアのお友達&瞬ちゃん支援同盟』に加入してほしいくらいだわ! もちろん、会費の3000円は15%オフの特別待遇で!」
「支援同盟……。そんなものがあるんですか……?」

「ええ♪ こちらのヒルダさんフレアさん姉妹も、同盟の幹部として活躍されてるんですのよ。で、こちらが会報。早いもので、もう27号まで刊行してまして、次号はこの遠足大特集を企画してますの。秘蔵ショット満載で読み応えもばっちり! 先生も、2人の愛にご理解があるようでしたら、是非ご参加いただきたいんですけど……」
「あ、いえ、私は、教師としての立場上、PTAの方々との個人的なお付き合いはあまり……」

「あらあ! いいえ、これはもう、地域運動みたいなものですのよ。こちらをご覧になっていただければおわかりになるかと思いますけど、過去の選挙や選挙運動に伴っての経済効果なども詳細にまとめてありまして、『ロシアのお友達&瞬ちゃん支援同盟』がいかに地域活性化に貢献しているか一目瞭然! 『ロシアのお友達&瞬ちゃん支援同盟』の盟主である私は、町内会長以上の発言力を……」


アルビオレ先生は、マーマに捕まってしまいました。
解放されるまで、どうやらしばらくかかりそうです。



その頃、ロシアのお友達と瞬ちゃんは、13個目の彫刻を探して、次のエリアへと足を踏み入れていました。






【menu】【next chapter】