氷河に少し遅れて、氷河の部屋のドアを開ける。
氷河はベッドの側にあるスツールに座っていて――多分、僕が来るまでの1、2分をじりじりしながら待っていたのだろう――冷たいのに燃えるような眼差しで、僕を迎えた。

無言で、氷河が僕を見ている。
ぞっするような目。
その青い瞳を、綺麗な瞳だと思っていたこともあったような気がする――ずっと、ずっと以前は。

でも、今は、その冷たさと、どこか常軌を逸した情熱をたたえているその瞳が、ただ恐ろしいだけだった。

「おまえに罪はない……」

氷河のその声に、僕はふっと身体が軽くなった。


そうだ。
僕に罪はない。
悪いのはすべて――。


「何をするのかはわかってるか」

氷河の声。
瞳と同じに冷たい、抑揚のない声。
僕は、横に首を振った。

わからないよ。
命じてくれなきゃ。
僕にそんなこと考えられるはずがない。
僕は、何も知らない“綺麗な”人間なんだから。


「服を脱ぐんだ」

ああ、そうか。
そうだった。

そんな簡単なことにすら思い至らなかった自分を、でも、僕は不思議にも思わない。
嫌なことは、誰だって考えたくないものだもの。

ともかく、早く、脱がなきゃ。
ぐずぐずしてると、氷河が怒り出すかもしれない。
でも、手が思うように動かない。
なんでだろう、まるで僕の手じゃないみたいだ。






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