思考が氷河のキスで中断された。
氷河の手が僕に触れて、優しく触れて、僕は自分では意識せずに、氷河の前に身体を開く。

嫌だ、嫌。
気持ち悪い。
そう思っているのに、僕の腕は氷河の背にすがり、氷河の舌を受け入れ、彼自身をも受け入れる。

心だけが氷河を嫌い、氷河を醜い獣だと断じ、だけど、身体はそれを欲してるんだ。

氷河は暖かい。
氷河は激しい。
氷河は強くて、僕よりずっと強くて、どんな力にも崩れることがない。
その力に支配されることで、僕は守られているんだ。

僕は守られている――?

でも、どんな力が僕に危害を加えようとしているんだろう?
それは、僕を刺し貫いて、僕を殺そうとする氷河のこの無体な力よりも邪悪な力なんだろうか?

「ああ……!」

この熱い楔よりも?
僕の身体を二つに引き裂こうとする、この鋭く熱せられた楔よりも?


痛い。
嫌だ。
苦しい。
でも、やめないで。
いっそ、このまま僕を狂わせて。

僕は、涙を零していた。
痛みと屈辱と、そして、おそらくは、あまりに激しいエクスタシーのせいで。

心と身体はこんなにも別のものなのだろうか。
僕の意思で動かせない、僕の身体。

僕の意思に逆らう、僕の身体。




『瞬、来い』

毎夜、僕に命じる氷河の声。

なぜ、逆らえないんだろう――?

僕はなぜ――。


矛盾する意思と身体に焦れて、僕は大きく身悶えした。

痙攣するように震える僕の身体を、氷河が揺さぶっている。
そして、僕の内側を掻きまわしている。

もうすぐ、僕の意思は消えるだろう。

氷河の力に負けて。


でも、僕は汚れない。
僕に罪はない。

なのに、僕はこんなにも弱い。
僕はひどく悲しくなった。


僕に加えられる氷河の力が、僕の意思と身体とを一瞬浮遊させ、そして破壊する。


僕は、その時、多分、悲鳴をあげた。






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